今年4月に新入社員を迎えた企業が、今ものすごく苦労している。
先日研修を担当した企業では、4月から全社で完全リモートワーク。新入社員ももちろん例外ではなく、入社以来自宅で研修を受けている状態とのことだった。人事担当の方も、新入社員の様子を気にかけているものの、自身の仕事も急激な変化の真っ只中で、日々どうしたらいいか色々と模索しているという話でした。
ただ、驚いたのは当の新入社員たちの声。
急なリモートワークになって、さぞや大変だろうと思っていたら、本人たちの認識はそうでもない様子。曰く…
「大変かどうか、そもそもこれしか知らないからわからない。」
「確かにネットの接続が悪いとストレスだけど。」
「リモートの方がやりやすいよね。」
などなど。へー、そうなのか。
確かに「リモートが大変」も何も、入社したときからこうなんだから、他の仕事の仕方とは比較できませんわね。そりゃそうだ。
ただ、色々な企業の様子を見てみると、そろそろ企業による差がずいぶん出ているように感じる。
一番大きく差が出ているのは何だろうか?
僕の見るところ、新入社員の「コミットメント」のあり方に、最大の差が出ているように感じた。
たとえば、うまく行っている(と言うよりも、どうにかこうにかworkさせている)企業では、リモートの心理的安全性みたいなものが良い方向に働いて、新入社員の主体性・自律性が引き出せている。
逆に、どうも芳しくない会社(ほとんどのケースがこちらだろうけど)では、リモートの距離感が悪く出て、まったくの受け身。エサを口に入れてもらうのを待っているひな鳥状態になってしまっているし、なんなら「食べろって言うなら食べますけど?」くらいの状態。
これはどこから来る差なのか?
もちろん元々の採用フィルターの良し悪しとか、企業風土とか、当然ながら複数の要因があるだろうけれど、あえて直近の要素についてのみ考えてみると、それは「パーソナルなサポートの有無・程度」ではないか。
あくまで僕の見た範囲での例だけれど、リモート環境にあっても新入社員が他人事・受け身にならずに主体的・自律的だなと感じる企業では、リモートでも細かく定期的に1on1を行ってメンタリングをしている様子だ。
なにがベストプラクティスか誰にもわからない状態では、ある種こういう「効率の悪い」やり方が、実は一番効率が良い。そういう手間をかけられるかどうかが、かなり大きな分かれ道だと思う。
ちなみに、こういう「新入社員への個別ケアを頑張っている企業」も、中の人の主観としては「全然うまく行ってない、いつも問題ばかり!」というもののようです。
よく考えれば当たり前の話で、だってこういうやり方はいつも問題が見つかっていつも失敗ばかりで、すごくストレスフル。だけどこの「失敗が見えている」ということがとても大事なことだと思う。
現状、急なリモートワークへの切り替えのために「とりあえずPC配って研修をオンライン化して」というところまでで、新入社員への対応が留まってしまっている企業が少なくないように見える。
いや、もちろんそこまでの道のりが途轍もなく大変だったということはよく分かります。3月以降の人事担当各位の苦労たるや。
ただ、このリモート環境下での受け入れは、従前の新入社員の受け入れとは根本的に異なると思う。環境が違うのだから、これまでの方法を単にオンライン化しただけでは「これまで同様」のパフォーマンスは上げられない。
しかも恐らく、こういう状況、すなわち「これまでのベストプラクティスの敷衍」ではなく「新しい個別最適の発見」を求められる状況は、今後も(来年も)変わらないように思う。
我々は、かなり本質的な「思想」の転換が求められている。
その中で、たとえば僕らが提供している「新入社員研修」のようなものについても、なにが必要とされ何が陳腐化するのか、一つ一つ吟味しないといけない。
その先に、企業研修の「これから」が見えてくるように思います。