二人のカナダの心理学者が、競馬場にいる人々について興味ある事実を見出しました。馬券を買った直後では、買う直前より、自分が賭けた馬の勝つ可能性を高く見積もるようになっていたのです。もちろん、その馬が勝つ可能性は現実には全く変わっていません―――同じ競馬場だし、同じコースだし、同じ馬です。しかし、ひとたび、馬券を買ってしまうと、馬券を買った人の心の中では勝つ見込みが明らかに高まっていました。このことは、一見奇妙に思えるかもしれませんが、この劇的な変化はありふれた社会的影響力の武器と関係があります。他の影響力の武器と同様、私達の中に深く横たわり、静かな力をもって私達の行動を導きます。もっと、簡単に言えば、自分が既にしたことと一貫していたい(そして、一貫していることを見てもらいたい)という、ほとんど強迫的ともいえる欲求によるものなのです。ひとたび、決定を下したり、ある立場を取ると、そのコミットメントと一貫した行動を取るように、個人的にも対人的にも圧力がかかります。その圧力によって、私達は前の決定を正当化するように行動するのです。

「影響力の武器」 -なぜ、人は動かされるのか-   ロバート・B・チャルディーニ 著 より

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