当社は、企業研修の仕事をしている。
「研修」というのは、わざわざ解説するまでもないかもしれないけれど、社員が集まって、講師が登壇して、グループワークをしたりなんだりする、あの「研修」のことです。
我々の仕事は、企業から社員研修を請け負って提供すること。誰か講師を派遣することもあるし、僕自身が講師として登壇することもあります。うちはごくごく小さい会社なので、僕自身が講師をやるケースも少なくない。
当然ながら、このコロナ禍でとんでもなく影響を被っていて、今年の研修案件は全部が全部何らかの変更を余儀なくされた。オンライン化したり、延期したり、中には中止もあった。零細企業としてはめちゃくちゃ大変な状況であって、正直、資金繰りや一個一個の案件の対応で、3月以降はてんやわんやであった。
クライアントと話すと(今はほぼすべてオンラインで)、今後の「社員研修」はどうするかな、という話になる。今はまだ、どこの企業でも「これが道筋」というような明確なプランは持てていないように感じる。まぁ、それはそうですよね。今の時点では誰も何もわからない。
もうちょっと大づかみに言うと「これからの時代の人材育成はどうなるのか?」というイシューである。これはもっとわからない。
ただ、ひとまず僕の身の回りで話をする限り、「これまで(コロナ以前)通りに何事も無かったかのように戻る」と考えている人よりも、「これまでとは根本的に異なる時代になる」と考えている人が多いように感じる。
もちろん僕のバイアスはあり得て、僕自身がそう考えているからそういう風に聞こえる・そういう話を引き出すという部分は少なくないと思うが、「何事も無かったように戻る」という前提で物事を考えるよりも、「根本的に変わるならばどうなるか?」と考える方が危機対応としては正しいように思うし、企業の経営者としてはそういう発想が大事だと思っている。
実際問題として、これから緊急事態宣言が解除されたとして(この文章の執筆時点では僕のいる東京はまだ解除されていない)、多くの企業でなにもかも元通りにはならないと思われる。
リモートワークは、かつてないレベルで広まった。そして、おそらくかなり多くの企業で定着するだろう。同時に、職場での勤務に戻る人々もいる。そうした異なる様式の働き方が同時並行で発生する。企業毎の違い、企業内での違い。多大なフリクションも発生するはず。
そうした中にあって、単に「前みたいな研修はできるかな?」というような次元ではなく、もう少し俯瞰して「これからの時代の人材育成」はどのような姿になっていくのかを考えてみたいと思う。
我が社は、たしかに「研修屋さん」ではあるのだが、提供しているのは「人材育成」であり「組織づくり」だと思っている。働く人が喜びを持って働き、企業が収益を上げることができるようになること。それをゴールと捉えて研修を提供してきたし、そのためであれば研修だけが手段とは思わない。
さて、いくつか考えたいテーマがある。
一つは「知識分散型モデル」という切り口。
僕は以前から、労働集約型・資本集約型・知識集約型の次に来る、価値創造・生産様式・社会モデルとして「知識分散型」というアイディアを持ってきた。あんまりきちんと言語化できて来なかったので、この機会にきちんと考えてみたいなと思う。
ここで、「知識分散型」とは何を言っているのか?
ごくごく簡単に、極めて伝わりにくいだろうことを念頭に敢えて言うと、多様な「個人」が情報テクノロジーによって手にするスーパーパワーと、そうした個と個のコラボレーションによって、爆発的な価値創造が行われる生産様式、とでも言うアイディアです。(やっぱり全然表現できていない。。)
これについては、別に深めたいなと思うので、今回はこれくらいで。
二つ目の切り口は、「理想の組織像」について。
コロナ後の世界で、あるいは「知識分散型」の世界において、理想の組織とはどういうものか?働く場所はどういうものであるべきなのか?という話。
さらにもう一つが、「現状からの変化・推移」という切り口から。
何事も理想どおりには行かないもので、「人材育成・組織づくり」においても、実態としては非常に多くの企業が苦しむ時期が長いと思われる。コロナがあって、急激なリモートワークがはじまり、新入社員も入り、今まさに大きな痛みの真っ只中にある企業も多い。
さらにこれから先、どんな変化が予想されるのか?どんな風に推移するのか?あるいは、あるべき組織像に向けて進むには、どんな風にして行くことが必要なんだろうか?というようなことも考えてみたい。
まぁ僕自身が、うっかりすると抽象論に振れすぎてしまうので、その辺りは気を付けつつ、考えていきたいと思います。
なんだかここまで来て、「これからの時代の人材育成はどうなるのか?」という問いに対して、随分大風呂敷な話だなと思われるかもしれないけれど、僕は「人材育成・組織づくり」は企業経営の根幹の一つであり、同時にある種の思想や哲学が含まれるとても大きなテーマだと思ってます。
もちろん、我々はみな未来において何が起こるか知る由もなく、こういう未来予想の類は、何を考えてもその通りには決してならない。
でも、たとえまったく違う未来が訪れるとしても、このようなことを考えていくこと、そして言葉にしていくことは、とても重要なことだと思われるので、少しずつ書き出していきたいと思う。
さぁ、ハードルを十分に上げきったところで、序文はここまで。