今年の春は、新入社員研修にほぼタッチしない春となった。私は「新入社員研修」はエネルギーが必要ではあるが、とても好きな研修だった。しかし、新入社員との年齢差は開くばかり!(笑) このような理由もあり、今年からは1歩引いた感じになった。
今まで20年近く、4月の最初は毎日毎日、新社会人とリアルに向き合い、いわゆる「新入社員研修」に没頭してきた。ビジネスマナー、コミュニケーション、仕事の進め方・・・等々、社会人として必要な基礎スキルの研修が毎年毎年、実施されていたのである。それが昨年からコロナ禍により様相がガラリと変わった。この急激な変化は想定外であったが、想定外のことが起こるのも、致し方のないこと。
それにしても、20年近くにわたり4月はいつも慌ただしく突入していた。3月は準備で明け暮れ、4月2日からはほぼ毎日、朝から夕方まで研修が続いた。なので「あ、今年も4月になったな〜」などと思いながら、初日の研修会場へ向かったものである。そして、集合研修現場で受講生の顔と名前を覚えるのが講師として最初の仕事。ここは感性を研ぎ澄まして、冒頭の自己紹介で顔と名前、そして話し方や話す内容、声のトーンなどから受け取る第一印象で「どんな感じの受講生かな・・・」「どんなことに希望を持っている新社会人だろう・・・」ということを掴み取ることを自分に課してきていた。意外と最初に受けた印象は当たっているものである。それこそ「経験値」というもので、なかなか説明はしにくいけれど。(笑)
今まで20年近くの間に出会った新社会人の中には深く印象に残っている方もいる。特に、講師になって3〜4年経った頃。つまり研修にも少し慣れてきた頃・・・というのは、私自身も余裕が出てきたので、一人一人をよりよく見ることが出来たと思う。おおよそ、1クラスの人数は25名〜30名。多いと30名を超えることもあり、こちらもそれなりに鍛えられもした。新社会人になるタイミングで「自分を変えよう」とする受講生も必ずいたのである。「今までは人の前で話をしたり、意見をいうことは苦手だったがそこを克服したい」という受講生が意外と多かった。その宣言通りに積極的に手をあげたり、発言する姿は愛おしく感じることもあった。新社会人になるタイミングは、新しい環境で自分にさらに磨きをかけることも出来るのであり、学業を学ぶことではない「学び」を体感する時でもあると感じている。
私は、そのように人が学び、人が変わっていく姿を現場で共に感じることが大好きだった。特に連続して研修を担当すると、初日と最終日では全員、顔つきが変わるのである。そのことをリアルに感じ取れる「学びの場」。ただ、学びの場はこのように人工的に作られた場であればあるほど、深い学びが得られるのも事実である。その深い学びを日常に転化させることが出来るのが「真の学び」に繋がっているのである。
そして研修の場は「学び方を学ぶ場」でもあると思う。その研修の場で「人から学ぶこと」が極端に減ってしまったことは、非常に残念に思う。学び方は人それぞれだが、その場が段々とオンラインに変わっていくことで、どうなっていくのだろうか?
包み隠さず全てが見ることができたリアルな研修の場。上半身のみしか見ることができないオンライン研修の場。この違いは大きいと感じるし、それによって学ぶ姿や学びの深さ、そして最も大切な「学ぶ」ということに対して真摯に向き合うチャンスを失ってはならないと感じている。
私は、どんな時代になろうとも学びを枯渇させてはいけないと思っている。このことが今後の課題のようにも感じている。