前回、福田がアップしたブログ、お読みになりましたか?面白いのでぜひ読んでみてください。
受講者が消える・・・本当に消えるわけではなくて「気配を消す」というのが、私は適切な表現のように思っています。
皆さんもちょっとだけ「あ~、わかる」と思われることがあるかと思います。例えば・・・小学生、中学生の頃、授業中に先生から質問されて「え、ちょっとわからないな~。指されませんように」と願って、何となく「身を縮めて」いる状態。とにかく自信がないので、ひたすら気配を消そうとしている感じ。でも、そういう時に限って、指されてしまうのですが。笑
今、社会全体がそんな状態になっているように感じるのです。
つまり、気配を消すようにして、息を潜めて「人からどう思われるだろうか?」「私の今の発言を何と思っただろうか?」ということを常に気にしている。不安で仕方ないからです。研修の場でもそのようなことは、しょっちゅう見られます。
「大丈夫、ここでは失敗しても平気だよ」というメッセージを発信し続けないと、多くの方(特に新入社員)は、安心して研修に参加出来ていない状態だと感じます。ただ「大丈夫だよ」というメッセージを発信し続けることで、何となく「ここは大丈夫だ」と感じ始めると、だんだんと元気に生き生きと自分の考えや意見を発信するようになります。きっと「ここは安全な場だな」ということが実感出来るわけですね。
しかし、研修だけでこのような場を作っても意味がありません。そこから先が重要で、彼らが配属された部署でも、企業全体でも「安全な場」が築かれていないと、また元に戻ってしまうことは容易に想像ができます。
先日、ある企業のAくんと言う社員が私の相談室にいらっしゃいました。
相談の内容は、
「どうも、今の職場は居心地が悪くて仕方がない。仕事は好きだと思うんですが、一緒に仕事をしている人のことを考えただけで、会社に行きたくなくなるんです。
自分では精一杯やっているのに結果が出ない。色々気も遣っているし、自分に合った仕事を振られていないようにも感じます。
もう、モチベーションも上がらないし、辞めようかな・・・と思っています。」
とのことでした。
彼の話を聞くと、単にモチベーションの問題というよりも、少しメンタルの不調がある感じにも見えたのですが、私は以下のように質問をしました。
「色々気を遣っている・・・って、どんなことかな?」
「例えば、部長から『2つの案のどっちが良いと思う?』とか聞かれるとしますよね。その時、心の中では『どっちでもいいな』と思っていてもそれが言えないんです。あれこれ言葉をみつけてそれらしい意見を言うようにしてる。
でも、同期のCくんは『どっちでもいいんじゃないですか』と言えちゃうんですよね。僕はそれがいつも羨ましい。『Cくんはいいな、正直に言えて』と。僕も本当は『どっちでもいい』と思っているのに、それが言えない。
そういうことが苦しいんです。」
と話してくれました。
Aくんは、今までずっと気配を消して、隠れ蓑を身にまとい、ひたすら「人からどう見られているか」を気にしながら必死に生きてきたように感じました。それが年齢を重ねてもなかなか消えない。で、苦しくなってしまった・・・と言う状態なんだな~と思いました。
そして「こんなことを言ったら・したら、周りは自分を思うだろうか?」と言うことが常に頭の中にあり、「ちゃんとしなくては」「何か尤もらしいことを言わなくちゃ」と強く自分に課しているんですね。日々の全てがそのような状態に陥っていれば、それは苦しくなりますよね。
これから、ますますAくんのような社会人が増えていくようにも感じています。そこを解きほぐしていくことも私たちが行なっている人材育成の仕事だと最近は強く感じています。
「リーダーシップとは」とか「評価者研修」などの前にこのように苦しんでしまう若年層の育成やマインドセットが重要になると思っています。
企業にとってはコロナの影響ももちろんありますが、このような時こそ「学び」を止めてはいけないし、学ぶことをポジティブに捉え、今の自分・出来ない自分・「ダメ」な自分を認め、そこからスタートを切り、自ら発信することのできる人材を育てていくことが、これからの人材育成に求められることではないでしょうか?