要らない「新入社員研修」って何でしょうか?
コロナコロナで、ご多分に漏れず研修業界も色々大変です。そういう中でまことしやかに言われるのがこんな言。
「研修の中身も全然変わるよね」
「名刺交換なんてやらなくて良いのでは?」
「これからの時代にあった新入社員研修にしないとね」
うーん、どうですかね。
誰あろう弊社創業者の上野が最近よく言うんですが、僕は意外とこの辺は懐疑的。たしかに変化はすると思うんですが、あんまり変わらない部分の方が大きいんじゃないかな?とも思ってます。少なくとも1年やそこらの短期スパンでは。
たとえば、名刺交換とか電話応対とか、たぶん来年も「研修で扱って欲しい」という企業の方が多いと思うんですよね。
企業の人事担当各位の心理としては「たしかに世の中大きく変化してはいるけど、これまでの内容も全く無しっていうのは怖いな」と思って、「念の為とりあえず去年の内容入れてもらえます?」というお話になるかと。
社会の動きには恐ろしく重たい「慣性」が働くもので、変化を感じやすいタイプの人が期待する程には早くは変わらない。でも厄介なことに、一旦変化が始まると、ある程度のところで雪崩を打って変わる。そういうものだと思います。
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ただ、仕事の現場では恐ろしく変化してますよね。これまで何年も変わらなかったことが、ものすごい勢いで変化している。
たとえば名刺交換。最近の僕自身の実体験からすると、することもあるけど、しないで済ませることも増えました。他にも、Zoomをはじめとしたテレカンや、メールではなくチャットでやりとりすることなんかも、すごく増えた。
けれど、これまでのやり方が全部失くなったわけでもない。リアルで対面するMTGもあるし、電話もある。
つまり「圧倒的に多様になった」というのが正しい認識かと思います。色々なやり方が・あり方が、共存するようになった。
なぜか、こういう大きな変化のときって、「みんな一斉にこうなる」って発想になりやすいですが、そうはならないんですよね。以前のものが完全に失くなったりはしない。同時に並列して存在し続ける。
そういうものかな、と思います。
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さてそんな時代にあって、たとえば「新入社員研修にこれは要らないな」っていうものは、どんなものがあるでしょうね?
色々なものが併存するからと言って、全部が全部、やれテレワークマナーだチャット作法だなんだと、次々新しいお作法やルールが出てきて縛られたらたまらないな、って僕は思うんですよね。
ともするとそういう方向に走りそうで怖い。ただでさえお行儀の悪い私としては、戦々恐々です。(そんなこと書いてると研修の依頼が減りそうなので内緒ですが。)
あ、断っておくと、僕は「礼儀作法」が不要だとは思わないですよ。
でも根本的に、礼儀作法のようなものは「プロトコル」であって、犬や猫をしつけるようにルールベースで教え込むことには、僕は大変に違和感を覚えます。ナンセンスだし、決して人間をモチベートしない。
そして、そもそもそれ以前に「テレワークマナー」なり「チャット作法」なりなんてものは、礼儀作法ですらない。単に「簡単にルールベースで人を仕込む」ための方便でしょう?
これまでと質的に異なる変化の時代。働く方法やスタイルが多様化する時代。そこにあって、もし「要らない新入社員研修」があるとしたら、僕はそういう「簡単にルールベースで人を仕込む」というような人間観に基づくコンテンツがそれだと思いますね。
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変化と多様性の時代には、「これだけやっとけばオールオッケー」みたいな受験参考書的パッケージでは乗り切れないですよ。
ぶっちゃけ、そういうのが今いっぱい出回りはじめてますけどね。ごく超短期で見れば意味がまったくないとは言えないかもしれない。でも、それらはたぶん数ヶ月で陳腐化します。
ただただ本質に向き合うしかないと思います。深く掘り下げて、思考を潜らせて、本質に向き合うしかない。
だから「こんな新入社員研修は要らない」というのは、「こういう内容が要らない」という話ではない。少なくとも現時点では誰にも断言できないと思うんですよね。
たとえば、名刺交換が要らない・電話対応が要らないというような話は、枝葉だと思います。ある種、どっちでもいい。それくらい教養的に身につけたって構わないし、不要な職場ならやる必要はない。今まで通りですよ。
だけど、「こういう考え方や伝え方は要らない」ということはある。
たとえば、
総花的になんでもかんでも詰め込むような研修
「これだけやっておけばOK」と安直に言い切ってしまう研修
ただルールを押し付けて考え方も本質も伝えない研修
というようなもの。
これからの時代、こういう研修は要らないし、あまり意味がないし、むしろやるべきでは無いんじゃないか。そう思います。