間もなく、新入社員研修の季節がやってまいります。
(…今年は新型コロナウィルスへの対応で、新入社員研修も様々な影響が出ていますが、今日は別のお話です。)

研修講師の多くの方が「新入社員研修」の講師からスタートするかと思います。
(…でも、これらは通年採用などになると「4月の新入社員研修」という、もはや風物詩のような研修も形が変わっていくかもしれませんね!)

私も例外ではなく、初めてのお仕事は「新入社員研修」でした。かなりドキドキしながら受講者の前に立った時のことを思い出します。あれからおよそ20年余りの年月が過ぎました。

今までとても多くの新社会人に研修を提供してきました。もちろん、一人一人のお顔は覚えていないのですが、特に印象に残る受講者が何人かいます。

新入社員・マツダくんの悩み

その中の一人、マツダくん(仮名)。大学を卒業している割にはとても幼く見え、いつもニコニコして席に座っていました。

連続して3日間の研修の2日目のお昼の休憩時間に私のところへ来て「僕、今までの自分から変わりたいと思っているんです。どうしたら変われますか?」と聞いてきたのです。

「今までずっと友達が出来ずいつも一人でいることが多かった。自分から積極的に話しかけることも苦手だし、いつも『まあ、いいか』という感じで大学卒業まで過ごしてきた。でも、やはり友達は欲しいし、みんなとおしゃべりもしてみたい。なんとか変わりたい」

という相談でした。

「自分から何かしないとダメですよね…」

私は「そうなんだね」と答えてから「そうだよね。友達、欲しいよね。でも、変わりたいな~と思っているだけでは、変わらないと思う。何か、マツダくんが無理なく行動できること・・・思いつく?」と伝えました。
「そうですよね、自分から何かしないとダメですよね」と言いながら、その時は席に戻って行ったのです。

その日の午後の研修からは、私は彼のことがとても気になり、グループワークをやっている時にも注意をして見ていました。
でも特に変わった様子もなく、淡々とそれまで通りにメンバーとワークに取り組んでいました。

マツダくんが参加していた研修は「公開研修」で、同業種の企業が集まっての新入社員研修でした。
ですので、自社以外の新入社員と一緒に研修を受ける形でしたが、研修が終われば自社に戻る・・・という、ある意味、濃い3日間の研修でした。

研修最終日、突然の挙手

そして最終日。お昼休憩の直前にマツダくんが挙手をして「すみませんが、ちょっといいですか?」と言ったのです。

私は「え、どうしたんだろう・・・」と思ったのですが「いいわよ。何かな?」と伝えると「今日、3日目でこのビジネス研修は最終日です。誰か僕と一緒にお昼を食べに行ってくれませんか?」とクラス全員に向かって伝えたのです。

私は突然のことでかなり驚きました。

「誰も反応しなかったらどうしようか」「誰かいるかな・・・」などと心の中で思っていると「いいよ、行こうか!」と2~3人のメンバーがマツダくんの申し出に賛同して結局4人でお昼に行くことになりました。

マツダくんにとっては、ものすごい勇気がいった行動だったと思います。
でも、そこまでしても「変わりたい」と思う気持ちが彼の成長につながっているように感じる出来事でした。

一期一会の出会いの中で

このように環境が変わるときに「自分を変えてみたい」と思う新社会人は意外と多いと感じます。

特に新入社員研修を担当すると、受講者からいわゆる人生相談があったり、アドバイスを求められたりすることが良くあります。
社会に出る不安や自分の立ち位置を確認したい、ということからそのような行動につながるのだと思います。

講師は、新入社員から見れば社会人の先輩です。一期一会の出会いではありますが、私はその後の社会人生活が山も谷もあるとは思いますが、なんとか乗り越えることが出来、その人にとって良い人生が歩める第一歩になるように・・・と思い研修をしております。

仕事の種類、働き方は変わろうとも、人と一緒に歩んでいくことは不変だと思います。その基礎となるのが「新入社員研修」ではないでしょうか?

今年はどんな新社会人と出会えるのか・・・毎年楽しみに3月を過ごしています。