「部下に仕事を任せる」、すなわち「権限委譲する」ことが、難しいと感じる上司は少なくないと思います。

任せたもののついつい「口を出してしまう」。あるいは「任せるより自分でやったほうが早い!」と思い、任せられない・・・
こういったケースでは「いつまでたっても部下は成長しないし、上司として部下を育てることが出来ていない」と私は思います。

大きくまとめると、以下のような点が「権限委譲」を考える上でポイントとなります。

「権限委譲(エンパワーメント)」はマネジメント手法
・適切に行うことが重要で、「なんとなく/場当たり」にはしない
・「権限委譲」は、上司の権限の一部を部下に与えること
 
部下にとっては成長の機会となる
部下の責任感が増すことにも寄与する
 
・部下を信じ、上司も「覚悟」をして任せることが必要
「権限委譲」と「権限移譲」の違いを認識し混同しない
 
・上司・部下の双方にとって「成長の機会」と捉える

中でも、特に注意したい「4つのポイント」を以下に挙げます。

ポイント1.「任せる」ための覚悟が必要

「任せるよ」と言ったのにいちいち「口を挟む」のは「権限委譲」ではありません。

心配でもあえて距離を置くことをお勧めします。それがないと、部下も結局は頼ってきます。

中途半端な「権限委譲」はお互いにストレスを抱えることになります。せっかく機会を作っても部下の「責任感」が萎えてきてしまう原因になります。

上司には「任せるぞ」と言う覚悟が必要です。

ポイント2.「自分と同じ」にはならない

人に任せることは、自分と同じにはならないことを自覚することも必要です。逆に言うと「自分と同じなら任せる意味がない」わけです。

上司も最初から出来た訳ではありませんよね?任せた当初は「うまくいかないのが当然だ」と思うことも大切です。

ある程度「我慢」して見守ることが、権限委譲した上司の役割だと思います。

ポイント3.権限 ”移” 譲にならないように

「権限委譲」すべきなのに、「権限移譲」になってしまっているケースがときに見受けられます。

「委譲」と「移譲」。音は同じですが意味ははっきりと違います。

委譲:(上司から部下へ)任せる=委任
移譲:(対等な立場で)移す=移転

これらの違いをきちんと知っておくことが重要です。

マネジメント手法としての「権限委譲(エンパワーメント)」は、あくまでも「委譲」であり、最終的な責任は「上司」にあります。それゆえ、適切に委譲した後も、様子を見たりフィードバックをしたり、サポートをしていく必要があります。

それに対し「権限 “移” 譲」と呼ぶのは、例えば・・・上司と対等のマネージャーなどに業務・裁量を丸ごと移すことにあたります。
「権限 “委” 譲」すべきなのに「権限 “移” 譲」になってしまっているケースというのは、ある意味「丸投げ」をしてしまっているような場合ですね。これは適切な「権限委譲」と言うことはできません。

「権限 “委” 譲」は、あくまでも「上司としての役割を果たすこと=最終責任は上司だ」と言う認識が求められます。

ポイント4.上司にとっても大きな成長の機会

部下に任せれば「失敗」ももちろんあり得るし、「失敗」が必要でもあります。

ただし、業務上許容できるリスクかどうかを見極めることは上司として絶対に必要な役割です。その意味でも「丸投げ」してしまうのは「適切な権限移譲」とは言えません。

その上で、適切にフィードバックをして、部下の学習につながるように

・任せて放っておくこと
・どうしても必要なら手助けすること
・フォローのフィードバックをすること
・そのために常にきちんと見ていること

これらをバランスよく行うことが大切です。

また、失敗した時に上司が感情的になってはいけません。感情的な上司の元では、その失敗を「隠す」ようになる環境に移行する場合もあり、組織としてのバランスも崩れていきます。

「失敗をきちんと報告できる環境」に整えていくことも、上司に求められる大変重要な役割です。

「権限委譲」をして部下を育成していくプロセスに「正解はない」と私は思います。上司自身も試行錯誤しながら「学ぶしかない」と言うことを肝に銘じてほしいと思います。

その上で、適切に部下に「権限委譲」をしていき、人材育成に繋げていってほしいと願います。